当院で手術(切除)可能な疾患

子宮頚管ポリープ切除

はじめに

子宮頚管ポリープ(頚管ポリープ)は、子宮の入り口から腟に向けて突出する良性の腫瘤です。多くの場合は無症状であり、子宮癌検診の際に偶然見つかりますが、不正出血、性交後出血、おりものが多くなるなどの症状がでることもあります。また、ポリープの長径が1cm以下で診断されることが多いですが、10cm以上となり腟から体外に出てくることでご本人が気づき診断に至ることもあります。有病率は2-5%とされており、原因は不明でしばしば再発します。

検査

子宮頚管ポリープと診断された腫瘤が、子宮筋腫分娩(子宮筋腫が子宮内から飛び出してきたもの)や子宮頚部ナボット(子宮頚部に粘液が貯まったもの)であることや、ポリープの茎部が太く血流が豊富な場合もありますので、状況に応じて経腟超音波検査を施行します。また、子宮頚管ポリープがある方の1/4以上が子宮内膜ポリープを併発しているという報告もありますので、症状がある場合には必ず経腟超音波検査を施行します。

治療

無症状の場合には経過観察も可能ですが、頚管ポリープの0.5%程度に異形成以上の病変(癌の前段階から癌まで)があると報告されており、後述するように切除による体への負担やリスクは少ないので、当院では切除を基本としています。
切除方法としては、腟を通して直接見ながら切除するのが一般的です。検査後に続けて処置が可能であり、痛みもなく約1-2分で切除が可能です。出血が多い場合にはタンポンで圧迫し、数時間後にご自身でタンポンを抜去していただくことがあります。また、出血は数日続くことがありますが少量です。ポリープが大きい場合やポリープの茎部(根元)が太い場合には、縫合(糸で縫うこと)が必要になる場合もありますので、その際には日を改めて時間をとって切除します。

治療後

切除した検体は病理検査に提出しますので、2週間後に当院へ電話していただき、結果をお伝えします(電話再診)。縫合を行った場合や出血が多い場合等を除き再診として当院へお越しいただく必要はありません。

オプション

通常のポリープ切除では、子宮頚管内にあり直接見えないポリープは切除できす、ポリープの根元までの完全切除ができない場合もあります。子宮頚管ポリープを頻繁に再発される方には、子宮鏡を用いた子宮頚管ポリープ切除も可能ですが、保険適応がないため自費(2万5,000円)になります。

外来子宮鏡手術

はじめに

子宮鏡とは、子宮の中(赤ちゃんが育つ場所)を直接見るための内視鏡です。腟から子宮の中へ子宮鏡を挿入して、子宮内の様子をテレビモニター(画面)に映し出すことができます。子宮鏡検査は、この子宮鏡を用いて子宮の中を直接観察し病気を診断する検査ですが、径が5mm以下の軟性子宮鏡(内視鏡の先端が柔軟に曲がるもの)を用いるのが一般的です。一方、子宮鏡手術は、画面に映し出された映像を見ながら手術操作を行う内視鏡手術の一つです。子宮鏡手術に用いる子宮鏡は治療を目的として作られた硬性子宮鏡で、先端は曲がらず真っ直ぐですが手術に必要な器具類を装備できる子宮鏡です。

子宮鏡のイメージイラスト

従来の手術用の硬性子宮鏡は径が10mm以上と太く、手術の前に子宮の入り口をしっかりと広げる操作(頚管拡張)を必要とし、手術には全身麻酔が必要でした。そのため、日本では今でも子宮鏡手術を入院して行う施設がほとんどです。
しかし、近年の子宮鏡技術の革新によって、径が5mm以下の細い手術用硬性子宮鏡が開発されました。この細径の子宮鏡を使用することで、頚管拡張をすることなく麻酔も使用しない外来手術が可能となりました。この技術は、ヨーロッパを中心に盛んに行われていますが、日本では慶應義塾大学病院において2013年より当院の院長が先駆的に開始しました。その後も、第一人者として学会での講演やハンズオンセミナーの講師といった活動を行い、10年以上日本の外来子宮鏡分野を牽引しており、2020年6月に当院を開業してからも無麻酔で400件以上の外来子宮鏡手術を行っています(2021年度の手術件数は2023/2/19の読売新聞に掲載 -無麻酔での外来子宮鏡手術は当院のみ)。当院での手術は入院を必要としないため、時間と費用の大幅な削減が最大のメリットではありますが、無麻酔であり意識もあるため手術中の痛みや不安が0にはならないことが最大のデメリットであり、そのため対象となる疾患が限られます。また、痛みが強い場合やリスクが高いと判断した場合には手術の途中でも中止する可能性がありますが、手術中に無理ができないことは安全面からはメリットとも言えます。

対象疾患および手術の準備

子宮内膜ポリープ、小さな(10mm以下の)粘膜下子宮筋腫、軽度のアッシャーマン症候群(子宮内の癒着)が子宮鏡手術の対象疾患となります。ただし、外来において無麻酔で行う手術であるため、上記対象疾患の中でも短時間(15分程度)で終了できると考えられる疾患のみが対象となります。なお、悪性の疑いがある場合は対象外となります。

外来子宮鏡手術を受けるための準備

  1. 手術の前に必要な検査:原則として、手術までに血液検査、尿検査、胸部レントゲン検査、心電図検査などを実施していただきます。なお、これらの検査に問題があった場合には、手術ができないことがあります。
  2. 手術の時期:子宮鏡手術は月経の終了間際から終了直後に行うのが原則です。そのため、手術の前にホルモン剤を投与し、月経を変更することがあります。また、妊娠の可能性がある場合には手術はできません。手術日が排卵日前ですが、性交渉により放出された精子が女性の体内で生き残っている可能性があるので、最終月経開始から手術までの期間は必ず避妊が必要です。もし避妊されていない場合には、手術は延期となります。
  3. 手術の前に必要な処置:手術の直前に1-2分で軽く頚管拡張を行います。しかし、子宮の入り口の大きさや形には個人差があるため、手術用の子宮鏡が入りにくいと判断した場合には、時間をかけて子宮頸管を拡張させることがあります。その場合は、手術の1~2時間前に処置を行います。

手術の概要と術後の生活

  • 場所:外来内診室で行います。
  • 麻酔:麻酔は使用せずに行いますが、手術当日は来院前に鎮痛剤を内服してもらい、来院時にも鎮痛剤(注射剤/座薬)を使用します。

手術方法

  1. 子宮鏡手術では、子宮鏡の先端から生理食塩水などの液体(潅流液)を注入することで、子宮の中を拡張し視野を確保します。その後も潅流液の注入と排出をコントロールしながら手術を行います。
  2. 子宮の中にある病変部を確認し、子宮鏡の先端から出る鋏の様な器具を操作して切除します。切除された検体は別の器具でつかみ体外に摘出します。手術方法のイメージイラスト
  3. 手術時間は、通常5分から15分ですが、「手術が長時間になる」あるいは「続行不可能」と判断した場合には手術の途中でも中止することがあります。その場合は、後日改めて再手術を行うか、麻酔下に子宮鏡手術ができる病院にご紹介いたします。また、注意をしていても合併症が起きる可能性は0にはなりません。手術中に合併症が起きてしまった場合には、入院できる病院へ搬送し、入院治療をしていただくことがあります。

手術中の疼痛

子宮内膜には痛覚がないので、子宮内膜ポリープを切る際には痛みはありません。しかし、子宮内膜の下にある筋層に刺激が加わると痛みを感じます。よって、子宮の筋層に強い刺激を加えるような手術は麻酔なしではできませんので対象外となります。手術中の痛みのほとんどは、子宮の中を拡張するために使用する灌流液に圧力をかけるためであり、かなり個人差はありますが月経痛の痛みに近いとお考えください。

手術後の投薬

手術の後は感染予防のための抗生物質を服用します。また、子宮内の癒着防止のため子宮内避妊器具を一定期間挿入することや、女性ホルモン剤を一定期間服用していただく場合があります。

手術後の生活

手術後(当日)

手術直後は腹痛や気分の不快(嘔気)が出現することがありますので、しばらくは経過を見てから帰宅していただきます。軽い腹痛が持続する場合もあり、出血は体を動かすほど多くなりますので、手術後は仕事も含め予定は絶対に入れないでください。性交渉、運動、飲酒は避け、ご自宅でゆっくりお過ごしください。入浴(バスタブにつかる)はせず、シャワー浴のみとしてください。

翌日以降

発熱、腹痛、多量の出血がない限り通常の生活で構いませんが、処方されたお薬は最後まで正しく服用してください。出血は7~10日ほどで止まりますが、多くの場合2、3日後に1度増量します。月経以上の出血量にならない限り様子を見て構いません。もし、発熱、腹痛の持続や増強、異常な出血がある場合にはご連絡ください。

外来子宮鏡手術をご希望され受診される場合の流れ

1.予約
WEB予約から初診の予約をお取り下さい。初診時の月経周期中に手術をする事はありません。他院にて子宮鏡検査を行っている方でも、必ず1度は当院にて子宮鏡検査を施行し、当院での手術が可能かどうか判断します。当院での手術が可能と判断した場合には、術前検査(胸部レントゲン・心電図・採血・採尿)を行い問題がないことを確認し、その後の月経発来後に手術となります。
WEB予約
2.初診(1回目の受診日)
問診や経腟超音波等によって、病状を確認します。病状に関する資料(紹介状や子宮鏡検査の写真など)やこれまでに行った検査結果をお持ちの方は、必ず持参してください。手術の必要性があると判断した場合には、無麻酔での手術が可能かどうか判断するため、日を改めて子宮鏡検査を行うための(月経直後に)予約を取ります。子宮鏡検査は予約枠が別にあるので初診日には子宮鏡検査は行いません。
(なお、初回をオンラインによる問診(自費)に振り替えることで、来院回数を減らすことができます。
その場合は初回来院時に子宮鏡検査を行います。)
3.子宮鏡検査(2回目の受診日)
子宮鏡検査を行い無麻酔での手術が可能かどうか判断します。また、もし当院での手術が不可能と判断した場合には、麻酔下に子宮鏡手術ができるご希望の施設にご紹介させていただきます。
4.術前検査(3回目の受診日)
胸部レントゲン、心電図、採血、採尿といった術前の検査を施行します。また、悪性(癌)である可能性を否定するため子宮内膜の細胞診も行います。
5.術前検査結果の確認と手術日の決定(電話再診)
月経が発来したら初日に電話かけていただきます(当院休診の際には休み明け最初の日にお電話ください)。全ての結果が問題ないことを確認し、月経の終了間際から終了直後に手術日を設定します。
6.手術日(4回目の受診日)
手術当日は、午後2時(14:00)に来院していただきます(14:15を超えると手術はできませんのでお気を付けください)。軽めの昼食を12時(正午)までに済ませてください。12時以降も(固形物の入っていない)水分の補給は構いません。手術は準備ができ次第開始し午後3時には終了している予定です。手術後は、1時間30分ほど座って経過を見ていただき、ご本人の体調によりますが、通常は午後4時30分頃には帰宅となります。当日は自宅にて安静にしていただきますので、手術後に予定を入れることがないようにお願いします。
7.術後初回診察(5回目の受診日)
手術1週間後に来院していただき、診察し出血や手術部位の状況を確認します。
8.術後2回目診察(6回目の受診日)
手術2週間後に再度来院していただき、最終的な診察をした上で、手術で切除した検体の病理検査の結果をお伝えします。他院よりご紹介いただいた方は、何も問題がなければ当院での診療は終了となり、紹介元の施設にお戻りいただくことになります。また、必要に応じて症状改善の確認や再発の確認のため、数ヶ月後に来院していただき超音波検査や子宮鏡検査を行うこともあります。

上記のように、6回程度(初診から終診まで約2ヶ月)は通院していただくことになります。なお、初回をオンラインによる問診(平日22時~・自費:8,800円)にしていただくと来院回数が1~2回減らすことができ、初回来院時に子宮鏡検査を受けていただくことができます。
ご希望の方は平日14:30以降にお電話でご連絡ください。

また、保険ではできない治療(自費診療)となりますが、全行程最短1ヶ月以内(来院回数3回程度:計15万円~18万円)をご希望の方もオンライン診療(平日22時~・自費:8,800円)から受け付けますので、まずは平日14:30以降にお電話でご連絡ください。